wikipediaでベルリン3部作と検索するとデヴィッド・ボウイさんのアルバムが出てきますが、そちらではなくクラウス・コルドンさんの著作のほうです。
舞台は第一次世界大戦終結前後から第二次世界大戦終了後のドイツ。
ざっくり説明するとドイツは第一次世界大戦末に革命が起きて皇帝が退位させられ(戦争で市民はくたくたで食料も底をついていた)、
敗戦国ゆえに多額の賠償金が課せられハイパーインフレが起きて戦後でもずっと貧しくて、
貧しすぎてなんとかしたいとなって何故かナチスが政権を握り、
ナチ以外は認めない言論統制下で戦争に突入し、
そして第二次世界大戦でも負ける…
という正直とてもしんどい時期のドイツを、ある家族の視点で描写したお話です。
『ベルリン1919 赤い水兵』では革命のころのベルリンでの貧しさ、戦争障害者の扱いなどが。
『ベルリン1933 壁を背にして』ではヒトラーが首相になり「ナチスに加担するか否か?」で家族が分断してしまったり、ユダヤ人の扱いが難しくなっていることが。
『ベルリン1945 はじめての春』では戦場になったベルリンの描写、戦後敗戦国での生活、そして主人公の家庭はソ連側だったのでその苦労(ベルリンは英米仏露で分割統治されました)。
常におなかすいてるし、ぎすぎすしているし、1945年以降もソ連支配じゃあ社会主義国家で自由主義側と比べるとどうしても一般市民は貧しいので、読んでいてしんどいシリーズです。「岩波少年文庫」から出版されているということはティーン向けではあって、冒頭に地図やら人物一覧が載っていて、主人公は必ずこどもで読みやすかったです。
時間を空けた三部作なので、1919年に登場したキャラクターがその後どう成長したか?活動したか?誰が生き延びて誰が死んだか?などがすごく厚みを感じるというか…小説で描かれる何かしらの事件を切り取って終わりではなく、キャラクターの人生は続いていて、毎日考えたこと行動したことで変化していくし全然安定しないなと感じました。
原作は1984年ごろから発行されて、日本では2001年以降に一度翻訳、この2020年リリースのものは2回目の翻訳?という形みたいなのですが、これを機に手に取って読む人が増えたらとてもいい本だと思います。私も図書館で児童文学エリアをうろついていて、たまたま見つけたから読んだだけなので、正直大人の方は遭遇率低そうですが。
いや~でもこの政治が死んで一般市民が死にかけながら生きていくお話、分かりやすいエンタメ要素がほぼないのでわかりやすいオススメが難しいのですが、おすすめです。