『気象と戦術』

戦争の歴史をを見ていると気象でのトラブルというのはびっくりするほどある、ということを教えてくれる一冊を読みました。

 

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これ多分季節問わず世界旅行しまくってる人でないと体で理解できないのですが(私も頭でしか理解ができていない)、地球って場所によって本当に気候が違うため、いくら本土で訓練していても攻める地域がかなり離れていると気象で作戦がおじゃんだし兵士もぼろぼろになるんですね。

 

①ロシアの冬将軍。

かのフランスナポレオンのロシア遠征も、ナチスドイツのソ連侵攻(バルバロッサ作戦)も阻止した、多分ロシア本土では元寇時代の日本カミカゼ並みに信奉されてるんじゃないかという気象。外国が攻めるとロシアの冬の半端ない寒さ、そして地面の泥化にやられてしまうのです。

・冬は食べ物が現地調達も難しいのに、エネルギー確保のために冬はより一層カロリーある食べ物が必要

・ウルトラ寒いから衣類も専用のものに着替えないと凍傷してしまう(兵士は割と待機時間も長いため)

・専用ないしは工夫が施されたオイルなど用意しないとライフルが凍ったり、大砲などの冷却水が使えなくなるetc

温暖な日本の雪が積もらないエリアで生まれ育っている私からすると本当に何もわからんです、雪が降る極寒地での戦い方。「そこも用意しなきゃダメなの!?」の連続だろうなあ。

 

フィンランドの冬戦争

ロシアは寒さを味方につけてるんだな~とお思いのあなた。間違っていませんが、ロシアは第一人者ではありません。ソ連時代にフィンランドに攻めた時、「極寒の地の戦争」がわかってなくてやらかしています。

・雪だらけなのに白くない、通常の軍服や戦車で攻めるので目立ちまくり

フィンランド軍は煙がほぼ出ないよう工夫された掩蔽壕を用意して、兵士が適宜温まって作戦遂行するのに対し煙出しながら暖を取るか(狙われる)、暖を取らずに攻めるかしかないソ連軍(凍傷しまくり)etc

これとは別に、フィンランド兵は生まれ育った地での戦闘するので地の利が半端なかったこともあります。

「12~1月は太陽が昇らない極夜(つまりずっと夜間作戦みたいなもの)」

「道路は幹線道路のみで枝道がほぼない(攻める道がほぼ固定されていて迎え撃つ側が狙いやすい)(道じゃない道を開拓しながら進むのは遅いしコストもかかるので基本しないです)」など、フィンランド攻めるのはかなり頭使うかアホほどの物量で攻めないと負け確定イベントっぽいです。

 

ベトナムの雨

WW2後のフランスvsベトミンの独立バトル、米軍が参戦したベトナム戦争での話なのですが、ベトナムは日本以上の雨季がある地域があり、地面が水だらけ泥だらけで進まないのはもちろん、「補給は空輸に頼っていたため、飛べない雨季に補給がめちゃめちゃ滞った」というトラブル。

 

他にも「日本軍のキスカ撤退作戦」他、具体的な事例が載っていてとても面白かったです。

これだけ科学が進化しても天気ひとつで作戦が左右されるの、自然は偉大~ってなるし、NBC戦(核・生物・化学戦)についても湿度やら雨やらが影響するしで、気象学は面白いなあと感心しきりの本でした。おすすめです。