私はずっと反出生主義者なんですが、この思想は厭世家(ペシミスト)なんかよりめちゃくちゃ口に出すことが憚られます。
というのも、親はこどもを産みたくて産んだし、弟夫婦もこどもを望んで産み、友人も会社でも「こどもが産まれることはいいこと」という大前提で生きていて、それを明確に否定する思想だからです。
なのでぼんやり自分の脳内で「なんで生まれない方がいいのか」ということを考えたりしていましたが、これ当然私だけじゃなくて歴史上そんな考えの人ちゃんといました。それがわかる一冊。
・古代ギリシャにあった「人間は生まれないのが一番いいことなんだよ、次点が早く死ぬことだよ」という思想
・仏教の「二度と生まれたくない、輪廻転生から外れたい」は反出生主義では?
・ワインバーグ氏の出産許容性原理
「こどもを産み愛し育てる意志のもとで生むこと(育てる気がないのに産まないこと)」
「何かしらのリスクがある環境下で出産を許容してほしいならば、自分が子供として受け入れても非合理的ではないこと(たとえば妊娠時に障害があると分かったとき、自分だったらその生涯を受け入れてまで生まれたいか?)」
・生まれる前に産んでもいいかの確認が取れない以上、どうあがいても出産は原書的暴力
…など、知らなかった理論や考え方に触れられておそらく初心者向けでよかったです。どうしても哲学っぽいので一部難解でしたが。
また、反出生主義者はみんな早く死にたいものだと思っていたところ、それとこれとはまた別の思想なようです。次世代を産まないことはまあ大体肯定されているのですが(他人が産むことは阻止できない)、自殺よりは「もう産まれちゃったのは覆せないから、これからのこと考えよ!」という前向きな思想が書かれていて、まあそりゃそうね、でもやっぱり早く死にたいなと思うなどしました。