『死刑全書』

私は死刑賛成派なんですが、それはぼんやり「どうしたって周りに危害を加えないと生きていけない思考の持ち主を、税金で自然死するまで養うのももったいないのでは」と考えているからです。

でも人権の問題か日本は死刑が残っているけど、海外では撤廃されている国もあるし…と歴史とともに、ほとんどは好奇心で『死刑全書』に手を出しました。

 

すごくおもしろかったです。

 

「死刑って中世時代くらいの過去の遺物だと思った? 残念! 今やネットで映像配信している国もあるし、世界的にみると実は数が増えてるぞ!」というインパクトある「はじめに」からスタートし、死刑の種類ごとにたくさんの解説や図が掲載されています。けっこう個人蔵ものがあって集めたのもすごいけど(どうやったらその情報に辿り着けるんですか)、名前を出したくない美術館や収集家もいるのかも…とも感じました。

 

過去のギリシャ、ローマ、オスマン帝国、西洋、そして中国、ちょっぴり日本と幅広く、

「宗教的な刑から生まれたので清める意味を持つ火と水で死なせることが多いよ」

「絵的に映えるけどジャンヌダルクの火刑はああいう形式ではなかったよ」

「十字架で死なせるときにどこをくぎ打ちすべきか? 手のひらにくぎを打つと重さで落ちちゃうから正解は手首!」なんていう知識を得られるものから、

「宗教の問題で処女は死刑にできないから、幼女だろうが犯してから死刑にしてました!」っていう胸糞案件、

「身体刑の延長で大体死んじゃう」みたいなかんじで「あれ? 私ってばいつの間にか拷問全書読んでた?」ぐらいの痛さがやばい死刑も知ることになるし、

「現代でもこの形式の死刑があんの? 人権無視の宗教バリバリのリンチじゃん!」みたいなのもあり(こういうのは絵ではなく写真がある)、

ただの死刑博覧会ではなくて勉強になります。グロいからいや、とかでなくこれはもっと読まれた方がいい本です。

 

特に読んだほうがいいのが、途中から人権みたいなものを意識して「一発で確実に死なせてあげたい」と試行錯誤するところ。

それまでの「痛めつけて処す」とは違うその意識の発生もさることながら、昔は処刑人のスキル如何によって延々と痛いだけで死ぬまで時間がかかるということもあったので、ギロチンの開発、絞首刑ひとつとっても足元の椅子を外すか…勢いよくおろして頸椎にダメージを与えるか、電気椅子は確実に死ねているのか、薬物による死刑は処刑人でなく医者が手を下すことになるが医者としての倫理は…など。

 

死刑を残すのか、残す場合どうやって殺すのか。考える余地がすごくあるテーマでした。おすすめです。