『パワー』

ナオミ・オルダーマンさんというイギリスの作家さんのSF小説『パワー』を読みました。突然世界中の女性が強い電力を放出できるようになり、男女間の力関係が反転した世界での小説です。おおむね4つの視点で話が進んでいく群像劇ですが、この舞台を描くのにそれは必要不可欠だったように感じます。

 

設定が設定なので「ああ、女ってこういう風に軽んじられてるんだよな」という現実を直視させられたり、「そうだ!やってしまえ!」と応援したり、力を犯罪に使う同性に対するあきらめの感覚を体験したり、読んだ後に考え込む一冊です。おすすめです。

 

英国女性小説賞(当時の名称はベイリーズ賞)を獲得し、米国オバマ前大統領のブックリストにはいり、エマ・ワトソンフェミニストブッククラブの推薦図書になるという社会問題提起本ぽさもありますが、エンタメとしての力強さがあるのでそういう情報なしで手を出しても楽しめるでしょう。

 

www.kawade.co.jp

 

 

 

 

ここからは若干のネタバレになります。

 

作者がイギリスの方なので仕方ないのですが、舞台がどうしてもヨーロッパやらアメリカやらに集中してまーじで東南アジア系が出てこないのが口惜しいです。

男尊女卑でいうと中東もやばいし、東南アジアもやばいので…どう反旗を翻したかを知りたい…。日本だと最初は男性のために女性を縛る法律や危険視するニュースが飛び交うかな~とおもいますが、米国で女性による軍隊が整えられたら日本は追従するとおもうんですよね。日本舞台の二次創作がめちゃくちゃ読みたい。

あとメインの小説部分が劇中劇構造になっていて、冒頭と末尾でのキャラクターのやり取りが「うわあ…」となる部分もギミックとして効いていて面白かったです。