『亜鉛の少年たち 増補版』

『戦争は女の顔をしていない』で有名なスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチさんの『亜鉛の少年たち』を読みました。

1978年~1989年のアフガニスタン紛争に参加したソ連の少年、女性、その母などのインタビューを集めた本です。

 

今今ウクライナ戦争を目の当たりにしている私たちですが、読むと「この時のソ連となんにも変わってないじゃん」と感じました。

戦地に行くとは告げず騙されて連れてこられた若者、「国際友好として食べ物を配ったりして現地の人と交流しているよ」という嘘が流される内地、軍備を売り飛ばしてお金に変える兵士、現地で略奪したものを嬉々として国に持ち帰る兵士とそれを受け取る家族。

WW2との独ソ戦大祖国戦争と比べて「自分たちがやっているのはドイツ側の行為ではないか」との指摘に耐えられない兵士や、「この国では世代ごとに戦争が起こる」と悟っている兵士、そして現地での売春を暗にすすめられる女性スタッフ。

加害国とはいえ一枚岩ではなく、戦いたくない人も動員されてめちゃくちゃなの、読んでいてとてもしんどいです。

 

そしてこの増補版というのも大事で、裁判記録が載っています。インタビューを受けた人が「そんなこと言っていない、息子名誉が傷つけられた!」などと訴えた裁判です。

ノンフィクション文学はどういう立ち位置のものかの確認に加え、人の戦争に対する認識が変わっていくというか、まだアフガニスタン紛争が過去になっていないというか、こういう弱気な発言をやり玉に挙げて封じて得をするのは誰なのかという問題に対峙しています。