『戦争障害者の社会史』

私は第二次世界大戦独ソ戦…特にドイツ側の資料を興味あってなにかと読んでいるのですが、今までとはまた違う切り口の本が2021年に出たので読みました。今まで行ったことがない地元の図書館で登録と予約をしてまで読んだ本。興味深かったです。

 

www.unp.or.jp

 

戦争すれば万全じゃない体で返される兵士もしばしば出るわけで、ぎゃくに重荷になるというか足手まといで大変だと家族や妻に冷たくされるなんてストーリーはよく見るのですが、実際社会としてはどういう対応してたの?ということが読める一冊。

 

そもそも世界的にも古代はそんなケアがなくて、というかナイチンゲール(1820-1910)がクリミア戦争(1853-1856)で衛生状態をよくするまで、多分怪我がやばい兵士は大半死んでいたのであんまり問題として対策を取られていなかったようで。

とりあえずドイツではプロイセン王国1850年に死亡した兵士の遺族に対しての援護法を作ったことを起点としているのですが、WW1でもWW2でも「精神的におかしくなった兵士に対するケアが薄い」「どちらも敗戦したので働けない戦争障碍者は社会からあまり尊敬されたりせず肩身が狭い」「働いて自立することで『男は家族を養うもの』という当時の性役割を果たして心身ともに社会復帰できる、という国の考え(だけど当時は男性自身もその思考だったとおもう)」なんかあって本当に世知辛い…。「農村部移住すれば土地と家が与えられるが、働き者の妻はいるか、キリスト教徒かなど審査が厳しい」とあったり、本当に当時の倫理観が反映されていました。今今はドイツは全面戦争はしていないですが、軍の規定はどうなっているんですかね。

 

また、戦争障害者の特徴として「戦争が終わった後にかなりの数の障害者が生まれる」ということで、国ががっつり政策を打ち出していることが興味深いです。

普仏戦争(1870-1871)で近代の盲導犬の祖である救護犬が生み出されたりしたようで。今までは何のケアもされていなかった障害者たちに恩恵がもたらされたことは唯一よかったことではないでしょうか(お金積んで順番待ちすれば戦争以外での障害持ちも救護犬を利用できたようです)。

 

余談ですが、巻末の最高文献のリストがものすごくて、本当にガッツリ調べて本を出してくださったんだなあ…個人でドイツ語の本はもちろん国内中のドイツの戦争関連書籍を読むどころか手に取ることも叶わないので、こういう本を出していただき改めてありがたいです。

 

あと個人的にドイツは敵からの空襲によるケガとかもケアのうちに入ってて、日本よりケアが手厚いのは単純にうらやましいですね!日本政府ケチだからそういうとこに絶対お金出さないよなあ。仕方ないって引いてる場合じゃなかったね。