『ライティングの哲学』

書くことを仕事にされている方(副業含む)4人が、書くことについて話す本のご紹介。

 

 

座談会→その後についての各自エッセイ(?)→座談会という構成になっているのですが、「ああ~現役で書かれている方もこういう苦労しているのか」「まだ全然書き方が定まってなくて四苦八苦している!」「ツールもずっとあれこれと試しているし、都度考えて変更したり立ち戻ったりしてる!」と元気がもらえる本です。彼も人なり、我も人なり。

 

可能性が無限大なため書き出せない時は庭作りをイメージする。なにはともあれ石を置いたら、もうその庭石は動かせないものだと考えて他の石や木の配置なり砂の模様なりを決めていける。後から見返して最初の石をどかすこともあるけど、踏み出す重要性についてわかりやすかったです。

 

〆切についても興味深く。締め切りが近づくにつれ自分の中の限界がわかるというか、「今回は時間的ないしはスキル的に書けない枝葉」が脳内で削ぎ落とされるため筆が進むのもわかるし、もっと頑張ればもっといいものが書けるのではと粘りたいところを「これはまったく満足のいくものではないが、私は今ここでこの文章を最後まで書くのだ」と腹を決めるところがよかったですね。同人誌を書く人にも響きそうな内容…同人誌はアンソロでもないと締め切りがなあなあになったりするというか、自分で決めて書くだけだから誰も追い立てないので。

 

あと赤裸々ログ記録も興味深かったです。毎日文字数と書けた時間と状況、問題点と翌日への引き継ぐ書くやつ、あれはぜひ真似したい。近いものに漫画家石田スイ先生が乙女ゲーのシナリオ執筆した時のブログ記事ありますけど、気づきをメモしてるのすごくいいとおもいます。

note.com

 

最初の座談会は歴代使用ツールトークで始まるのでウェブ記事っぽいのですが、違う畑の物書き4人を集めて、プロの編集さんが追い立てたり、4人が「白紙から書き出すの大変だよね!」と物書きあるあるの話をぶっちゃけたり、という一連の流れが本にまとめて出版されてよかったなあと。ツールに関しては数年後はもう全然使わなくなってるかもしれませんが、現役物書きがどういう思考で選んで書いて研鑽して悩んでいるかという部分はずっと色褪せない気がするので。

 

星海社さんの新書は本文デザインにクセがありますが、まあそれはそれとして書くことや描くことに悩まれる方におすすめです。