『伝わる英語表現法』

初版は2001年の名著ながら絶版状態で入手困難だった本をご紹介します。『伝わる英語表現法』です。

『独学大全』の読書猿さんが紹介したあたりから何故か復刊が決まり、復刊しても店頭やらネット書店で売り切れが続く、一部界隈で盛り上がっていた本です。多分そろそろ手に取りやすくなっているのですが、帯に「岩波新書ラシックス限定復刊」とあったので、ぼんやりしていたらまた消えることでしょう。

 

 

「難しめの単語で言いまわすより、中学生でも知っているような名詞やら動詞やらで表現する方がわかりやすいし、実際大統領のスピーチもそんなかんじなんだよね」というところから始まり、

「日本語と英語では言語としての作りも作法違いすぎるから、直訳したら駄目なんだよね」

「日本語って主語がなかったりするから、内容を読んで補完して英訳しないと」

「日本語って箇条書きは表現として単調として忌避されるけど、アメリカではむしろ3つくらい揃えて出すことをヨシとしてるんだよ」

「日本語は一文が長かったりするし、突然主観が変わったりすることもあるので、英訳するときは文を切ったり、情報を後ろに回したりする方が適切」

と、具体例と共にがんがん書きなおしている本です。

 

NHKの『ラジオ英会話』のテキストで、海外文学を女優さんがプロの翻訳家さんの指導とのもと訳すコーナーがあって、毎回苦戦してるんですが、まあつまりそういうことなんだよね。そのまま単語変換しても「気持ちがいい日本語」にならないし、日本語をストレートに英訳しても多分「ぎこちない英語」にしかなっていないんでしょう。

 

京大の入試はごっつい英文和訳と日本語の英訳で、総合的に語彙と文法の力を見極めているんだと思いますが(それにしたって採点者に英語力が必要かつ時間も必要なすごい入試ですね)、多分これはその助けになる本じゃないかなと思います。言い回し力も鍛えられるんじゃないでしょうか。読んでよかったです。